こんにちは
現在、当院では年2回、健康診断を実施しています。
元気な子でも思わぬ病気が見つかることも多々ありますので、毎年受けることをおすすめしています。下の症例は実際に今年病気が発見されたワンちゃんです。
健康診断で血液検査を受けた2歳のワンちゃん。肝酵素の上昇、腎臓の数値や血中蛋白質、コレステロール値の低下など多くの項目が正常値から逸脱していました。本人は元気いっぱいで、見かけ上の異常はありません。
追加検査でアンモニアと総胆汁酸(TBA)を測定しました。結果は、TBAの上昇が確認されました。(昨年末からTBAも院内で測定できるようになりました)同時に超音波検査もしたところ、肝臓付近に異常血管の存在が疑われました。
これらの結果を踏まえて、門脈体循環シャント(PSS)という病気が疑わしくなり、大学病院でCT検査を受けてもらいました。
PSSという病気は簡単にいうと、血管の奇形です。本来ないはずのところに血管があることで、肝臓へ送られる血液が少なくなり症状を引き起こします。先天性と後天性があり、肝外シャントと肝内シャントに分けられます(異常血管が肝臓の中か外か)。
症状
成長不良、小肝症、流涎、けいれん発作、膀胱結石、食事前後での行動変化 など
シャントの位置や太さによっては先天性であっても、今回の症例のように症状が出ないこともあります。
後天性の場合は、肝臓の病気に続発して起こることがあります。
本来、腸で吸収された栄養分や体から出た毒素などが門脈という血管を通り、肝臓へ運ばれ、毒素の代謝や栄養分の貯蔵などが行われます。たくさんの仕事を担っている肝臓がうまく働けない状況になってしまい、様々な症状が見られる病気です。
今回の症例では胃静脈から後大静脈へのシャント血管がCT検査で見つかり、手術を受けることになりました。手術で血管を結紮して肝臓にしっかり血液が流れるようにすることで、肝臓がきちんと機能できるようになります。
病気は早期発見、早期治療が重要です。今年も春の健康診断を予定していますので、最近検査をしていない方は受けることをおすすめします。