お知らせ

犬の子宮蓄膿症


こんにちは、獣医師の伊藤です。

先日、当院を受診したワンちゃんについてお話します。

 

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この子はミックス犬のリンダちゃん、10歳の女の子です。4月21日に当院を受診しました。

いつもより明らかに元気がなく、ヨロヨロとしているのでおかしいと思い連れて来られました。

原因を探るため、血液検査やエコー検査等の精密検査を行った結果、子宮蓄膿症であることが判明。

飼い主様へ、病気についてや早急な手術が必要な事をご説明し、すぐに緊急手術となりました。

 

手術は無事成功。翌朝には立ち上がり、食欲も戻り、元気な表情を見せてくれました・・・。

 

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術後の経過も良好で、点滴等の治療を十分行った後
4月24日、元気に退院して行きました。
治療が間に合い、本当に良かったです。


せっかくですので、この「子宮蓄膿症」という病気がいったいどういうものなのかご説明します。

 

ワンちゃんは通常4~6歳を過ぎると出産は困難といわれています。しかしながら、出産が困難な年齢になっても閉経するわけではなく、性周期は訪れます。そうすると、年齢とともに卵巣のホルモン分泌バランスが崩れ、性周期による生殖器の変化に対して身体がついていけず、発情後2~4週間後に生殖器の病気に罹りやすくなります。

 

ワンちゃんの生殖器の病気の中で特に多くみられる病気に、子宮蓄膿症があります。

これは、子宮の内部に膿がたまる病気です。1歳ほどの若い年齢でなることもありますが、通常は中高齢の不妊手術をしていないワンちゃんに多くみられます。

 

症状は、元気・食欲がなく、水をたくさん飲んで尿をたくさん出す、陰部の出血や汚れ(膿)がある、お腹がふくれるなどです。

発見が遅れた場合は死亡することもある恐い病気です。

 

原因は、発情後の黄体期(免疫力が低下します)に細菌が子宮内に進入、増殖することです。卵巣のホルモン分泌バランスが悪いときに特におこりやすいです。

 

診断は、問診、身体検査、レントゲン、エコー等で確認し、血液検査で状態を把握します。

 

治療は、外科手術で膿の溜まった子宮と、卵巣を取り出すことです。

できるだけ早い段階で手術を行うことで、助かる可能性も高くなります。それゆえ早期発見、早期手術が重要です。ただし、発見が遅れた場合や症状が重い場合は、脱水や電解質の不正を手術前に点滴で補正してから手術を行います。

 

手術を行わない場合、抗生物質と子宮頚管を開く注射で膿を外に出させるという方法もありますが、多少の延命効果はあるものの最終的には亡くなります。

 

ワンちゃんの変化に早めに気づいてあげることも大切ですが、不妊手術を行うことで子宮蓄膿症は防ぐことができます。そのためにも、早期の不妊手術をお勧めします。