お知らせ

アジソン病について


こんにちは。

獣医師の伊藤です。


先日、当院を受診した
ワンちゃんについてお話します。

種類:トイプードル
性別:雄
年齢:約7歳

そのワンちゃんは
3日前から食欲がなく、
来院日は朝から起き上がることも
出来ない状態でした。

飼い主様にワンちゃんの状況を聞きながら
同時に身体検査も行います。

ワンちゃんは呼びかけや刺激にも反応が鈍く、
意識状態も低下しており
眼振という神経症状が出ていました。

その他に体温は35.0℃と低体温、
低血圧、徐脈で非常に危険な状態でした。

救急外来として、すぐに全身状態の検査
および治療を開始しました。

血液検査の結果では

・血糖値の著しい低下
・腎機能の悪化
・電解質のアンバランス
・炎症反応を示すCRPの著しい上昇

が認められました。

超音波検査では
ショック症状を引き起こすような
内臓器の損傷などはなく、
明らかな異常は認められませんでした。

検査結果が出てくるに従い、
いくつかの病名が頭に浮かんできました。
そのなかで非常に珍しいですが、
可能性が否定できない病気として
「アジソン病」という病名がありました。

飼い主様にアジソン病を含めた
いくつかの病気の可能性を説明し、
治療と平行しながら
追加で検査をさせてもらうようにお願いしました。

アジソン病を診断するためには、
コルチゾールというホルモンの濃度を
測定しなければなりません。
院内での測定が出来なかったため
外注検査になり、優先して検査を
行いました。
(現在は院内でコルチゾール測定できます!!)。

入院での点滴を中心とした治療を行いながら、検査結果を待ちます。

帰ってきた検査結果は、アジソン病を示す結果でした。



ここでアジソン病について
お話いたします。


アジソン病とは?

副腎皮質機能低下症とも呼ばれ、
腎臓の近くに存在する副腎(ふくじん)という
臓器の機能が低下してしまう病気です。

副腎では、コルチゾールやアルドステロンという
副腎皮質ホルモンを合成しています。
これらのホルモンは、
ナトリウム・カリウム・水分の体内バランスの調節
エネルギー源である糖の利用調節・血圧の保持
ストレスから身体を守るなどの働きを行っています。

これらの働きは生きていくうえで必要不可欠であり、
副腎皮質ホルモンは
身体にとってなくてはならないホルモンです。

アジソン病ではそんな大切なホルモンが
副腎で作られなくなってしまいます。


アジソン病の原因は?

アジソン病の原因には、
副腎が原因ははっきり分からないが
破壊されてしまう特発性の場合や
感染症、腫瘍、薬物性などが挙げられます。
しかしながら犬のアジソン病の多くは
特発性のアジソン病であり、
原因不明に副腎が萎縮しています。


アジソン病の症状は?

・食欲不振
・体重減少
・虚弱
・嘔吐
・下痢
・血便
・低体温
・徐脈
・振戦(ふるえ)
・多飲多尿
・痙攣

などの症状はさまざまです。

ただし、多くのアジソン病は
ゆっくりと病状が進行するため、
症状も良くなったり悪くなったりの波をともないながら
ゆっくり進行していきます。

また、これがアジソン病といった
特徴的な症状はないために
他の病気と診断されてしまう場合もあります。

副腎の機能がある程度失われ
さらに強いストレスが加わると、
突然のショック状態(アジソンクリーゼ)となり
非常に危険な状態に陥ることがあり
命にかかわります。


アジソン病の診断は?

・臨床症状の確認
・身体検査
・血液検査
・尿検査
・画像検査(超音波検査やレントゲン検査)

を行います。

それら検査結果から
アジソン病の可能性が高い場合には
ACTH刺激試験という特殊検査を行い、
副腎皮質ホルモン(コルチゾール)の
濃度測定を行います。

この検査により
コルチゾール濃度が低く測定された場合、
アジソン病の確定診断となります。

当院では院内検査でコルチゾール濃度を
測定することができますので、
アジソン病が疑われたワンちゃんの検査も
迅速に行うことが可能です。


アジソン病の治療は?

入院での点滴治療、ステロイド剤の投与などを行い、
ワンちゃんの状態が安定し
飲水や食事が取れるようになったら、
自宅での維持治療になります。

維持治療は
不足している副腎皮質ホルモンを
内服薬で投与します。
定期的にワンちゃんの症状や状態を確認しながら
お薬の量を調節していきます。

アジソン病は、完治しない病気です。
適切な維持治療が一生涯必要となります。
しかし、きちんとお薬を続けることで
安定した生活を送ることができるようになります。

ただ、状態が安定していても、
ワンちゃんに過度なストレスが加わる状況
(トリミング・ペットホテル・長距離ドライブ・旅等)では、
アジソンクリーゼを引き起こす可能性があるため
日常生活では出来るだけ
ストレスを避けた生活を送ることが望ましいです。


そのワンちゃんは、
早速アジソン病の治療を開始したところ
状態は日に日に良くなりました。

一時は生命の危険もあった状態から
検査や治療に耐えてくれたので
全身状態は回復し、
食事も取れるようになったため
退院しての維持治療が可能になりました。

今も治療は継続中ですが、
非常に安定した生活を送れています。