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薬を使う側の問題ですよね・・・     アレルギー性皮膚炎との付き合い方


 

犬(猫もそうですが)は、体中が体毛で覆われている生き物です。そのため体表面を防御する役割は皮膚だけでなく体毛も多くを担っています。逆に言うと犬の皮膚はそれ単独では防御力が人間より弱いといえます。

 

皮膚病は春先より多く発生し始めます。多くの原因は真菌、細菌、外部寄生虫によるものですが、治療に対してなかなか反応しない(治りが悪い)患者さんが時折みられます。その大半はアレルギー体質の患者さんであり、外的な原因を除去してもその免疫過剰反応の原因を特定してあげなければ、なかなか痒みをコントロールすることが困難です。

 

アレルギー性皮膚炎の治療は、まず第一にその原因物質(アレルゲン)を特定して患者から遠ざけること、またはアレルゲンに対しての減感作療法などです。第二に内科的な掻痒緩和コントロールです。第三にその患者の体質(乾燥肌?脂性?)に合わせたシャンプー(ま、薬用に限らず)療法です。第四に食餌療法です。さらに最近では脂肪由来幹細胞を利用した再生医療によりアレルギー体質の改善に役立ったという報告もあります(近々当院でも導入予定)。

 

アレルギー性皮膚炎のコントロールは非常に時間がかかり、そして検査や治療に結構な費用もかかります(私個人の感覚としてですが・・・)。なので、各飼い主様にとって費用対効果の良い手段を提案するよう心がけています。

 

さて、柴犬の5才のワンちゃんです。昨年の12月に当院に来院されました。他病院にてアレルギー性皮膚炎の治療を行っているが体の痒み(特に耳)がおさまらない、治療内容は月に1回のノミ・ダニ駆除と、月に1回の副腎皮質ホルモン製剤の注射を行っているとのこと。来院時の状態は、慢性化した細菌性外耳炎、全身のいわゆる被毛粗造、接触性の過敏症、局所的な脱毛および全身性の痒みがありました。

 

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これはアレルギー・・・というより副腎皮質機能亢進症の症状では?まずは検査を行い、細菌性の外耳炎の治療を開始しました。また、飼い主様に痒み止めとして1年間使用され蓄積されてきた副腎皮質ホルモン製剤が体に悪影響を及ぼしている可能性を説明し、体から外因性のステロイドを抜いていく治療も開始しました。

治療を開始して1ヶ月、外耳炎の改善および痒みの低下がみられたためアレルギー検査および内分泌検査を行いました。

 

アレルギー検査の結果は、ハウスダストに通常の2800倍の感受性!接触性アレルギーが疑わしいため、室内での飼育をやめてベランダに専用の小屋を作っていただきそこでの生活に変更してもらいました。生活環境の変更で若干の痒みの減少がみられましたが、いまだ副腎皮質ホルモン製剤(内服ですが)は月あたり50mg程度必要な状態が続いています。しかし、環境の変化から徐々に被毛の状態が改善し始め、治療開始から5ヶ月目で頚部の脱毛の改善、被毛粗造の改善、毛色の正常化が見られました。

 

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アレルギー性皮膚炎においてその痒みをコントロールすることが重要です。異論はもちろんあるかもしれませんが、その主役はやはりステロイド製剤であるのが現状です。だって早く良く効くんですもの。長く使うには注意が必要ですけど、使い方次第です。飼い主様にその薬のメリットとデメリットをしっかりと説明する、ステロイドは処方する側がしっかりとその責任を果たす必要がある薬なのです。ステロイドで病気になったのではなく、ステロイドの副作用が主となるような使用をしただけ・・・薬が悪者のはずなんて始めから無いんです。よく知らないモノを安易に使うべきではありませんが、使った方が良いと判断したときは飼い主に包み隠さず説明すればいいだけなんです。それに対して飼い主が選択する・・・それが本来の自由診療だと思います。