犬、猫などの小動物の骨折は当院では非常によく遭遇する症例の一つです。
実は動物の骨折治療はとても難しいです。
理由は、①とても小さいこと、②手術の後の管理が難しいこと、③費用がかかることです。
しかし、それを少しでも克服するため多くの技術があります。
当院でも昨年末から新たな骨折治療設備である、ロッキング・コンプレッション・プレートシステム(以下LCP)導入しました。
LCPは骨折の癒合をより早める方法であり、またこれまでのインプラント治療では困難であった粉砕骨折(いわゆる複雑骨折)に対しても有効な方法です。詳しいことはいろんな人がたくさんweb上で語っているので割愛します。
さて、今回の患者さんは猫ちゃんです。交通事故(おそらく礫傷)に遭遇し、両側の下腿骨(脛の骨)に粉砕骨折がおこっていました。しかも両側とも開放骨折といって骨が飛び出しているほどの重症です。
インプラント治療は感染がおこっていると通常行いません。しかし、両側の粉砕骨折のため感染の治療とインプラント治療を並行して行う必要があります。最悪の可能性を飼い主様に了承していただき治療を開始しました。
抗菌薬の投与、5日間の創洗浄を行い、手術による骨髄内洗浄、インプラントによる仮固定術を実施しました。
(右側) (左側)
両側の骨折のため術後の管理が難しく、想定の範囲内ですが左側の粉砕骨折の仮固定は容易に破たんしました。
しかし2週間で感染がおさまり、仮固定のインプラントを抜去してLCPの設置術を行いました。
手術直後 2週間後
感染が治まった後は、LCPが非常に有効に作用しています。
今回、両側の開放性粉砕骨折であることから、やり直しのきかないLCPを第一選択として選べませんでしたが、感染が治まるまで仮固定を行うことでLCPが有効に働くことができました。
さあ、今後はリハビリです!