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コリーアイ、コリー眼異常


 

コリーアイ、あるいはコリー眼異常(Collie eye anomalyCEA)は犬の遺伝性眼疾患です。その病名の通り、コリー犬種に多く、コリー、シェットランド・シープドッグ、ボーダー・コリー、オーストラリアン・シェパードなどがかかりやすい犬種として挙げられます。

コリー眼異常は、遺伝性の目の病気で、常染色体劣性(潜性)遺伝によります。常染色体は、身体上の性を決定する性染色体以外の染色体を指します。染色体は2本で1対となっており、母犬と父犬から片方ずつ受け継ぎます。常染色体劣性遺伝は、その2本の染色体どちらにも遺伝子変異を持つときに病気を発症します。

コリー眼異常では、眼球後部の内側をおおっている網膜や脈絡膜(みゃくらくまく)、強膜(きょうまく)に異常が現れます。

眼球解剖図.jpg

網膜は眼球内に入ってきた光を受け取り、電気信号に変えて視神経を介して脳へと情報を送ります。

脈絡膜とは、網膜の外側の膜で、網膜に栄養を供給します。

強膜とは、眼球の外側で眼球の形態を保持するための膜で、白目の部分です。 

コリー眼異常は、発生の過程で起こる異常です。発生とは、受精卵から体を作っていく過程のことを呼びます。

 

コリー眼異常の症状は、軽度であれば分かりやすい症状はほとんど現れませんが、重度であれば失明することもあります。

その症状によってグレード分類する場合もあり、以下のように分類されます。

グレード1:眼底の血管の異常なうねり(血管蛇行)
グレード2:脈絡膜や網膜の低形成
グレード3:組織がない部分がある(欠損、コロボーマ
グレード4:網膜がはがれる(網膜剥離
グレード5:眼球内で出血が起こる

コロボーマとは、受精卵から体が形成されていく過程(発生)での異常による組織の欠損のこと。
その他、さまざまな部分で網膜が正常に形成されていない(異形成)こともみられる。

グレード3以上では、視力障害が起きます。失明まで至る可能性があるのは、グレード45です。これらの異常は、通常両側の目で起こりますが、異常の程度は左右の目それぞれで異なることが多いです。 

診断は、生後58週齢での眼底検査が推奨されています。それは、脈絡膜の低形成が分かるのがこの時期であるということと、この時期以降では、網膜に色素沈着が起き、異常かどうかの判断がとても難しくなるからです。

網膜剥離や眼球内出血が起こっている場合は、超音波検査も行われます。コリー眼異常の遺伝子変異を検出する遺伝子検査も利用できます。

残念ながら、治療法は確立されていません。発症した場合は、生活に支障がなければ無治療経過観察を行い、その他症状に合わせての対症療法が行われます。

好発犬種を家族に迎えた時には、一度眼科検査を受けることをおすすめします。