お知らせ

急性膵炎


先日、来院された症例です。

10歳のワンちゃんで、前日からの嘔吐、血便、食欲不振で来院されました。体温は39.2度で発熱が認められました。下痢はタール便ともいわれる真っ黒な便でペットシーツなどに染み込むとやや赤く、血液が混じっているのがわかります。これは、胃や小腸からの出血を意味していて危険なサインの一つです。

 

一般血液検査ではややCRP(急性炎症の値)の上昇が確認されました。

腹部超音波検査では胃から大腸までの広範囲の炎症、小腸のコルゲートサインが確認されました。

 

※コルゲートサインとは、腸がヒダ状に波打っている状態のことで強い消化管炎症があり、腸壁が痙攣していることを示しています。

 

通常の胃腸炎にしては症状が重く、検査中も祈りのポーズといわれる強い腹痛のサインを見せていました。追加検査としてcPL(膵特異的リパーゼ)を検査したところ、高値を示したので急性膵炎という診断に至りました。

 

急性膵炎とは、十二指腸の近くにある膵臓という臓器が炎症を起こしている状態です。膵臓は消化液の分泌やインスリンなどを分泌して血糖値の調整をしている重要な臓器です。本来、膵臓から分泌される酵素は腸管に入ってから活性化して蛋白などの分解を助けるのですが、何らかの原因で膵臓内で活性化し、膵臓の自己消化を引き起こすと急性膵炎につながります。重症化するとDIC(播種性血管内凝固)から多臓器不全へ進行し、命につながることもある怖い病気です。

 

症状は...

急性の嘔吐、下痢、消化管出血、食欲不振、腹痛などの消化器症状が主体です。

 

治療

点滴、抗生剤、ビタミン剤、胃腸薬、制吐剤、少量頻回給餌など

数年前に世界初の急性膵炎の治療薬が発売され、当院でも状況に応じてその薬を使用しています。

 

幸いにも今回の患者さんは5日間の治療で症状も落ち着いていき、10日後にはいつも通りの様子に戻りました。

 

ちなみに膵炎の発症リスクを上げるものはいくつかありますが、特に重要なものとして肥満と高脂肪食の給与が挙げられます。もちろん、当てはまらない患者さんもいますが、自宅でできる予防として肥満の子は減量を推奨しています。また、膵炎は再発することもあるので、治療後は基本的に低脂肪食の給与をお願いしています。

 

↓ 小腸のコルゲートサイン

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↓ 来院時の血便

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