前回、健康診断で偶然見つかった脾臓腫瘤についてお話ししました。
2名の患者さん共に手術にて脾臓摘出を行い、病理組織検査を提出させていただきました。
今回の脾臓腫瘤の病理組織検査の診断結果は
「脾臓の低悪性度リンパ腫」でした。
脾臓にできる腫瘤には、非腫瘍性疾患である血腫や結節性過形成と腫瘍性疾患である血管肉腫などが比較的多いと思います。しかし、脾臓は造血機能に加え、免疫(リンパ)系機能も備えており、リンパ腫の発生も起こり得ます。
リンパ腫とは、細菌やウイルスなどの体内への侵入を防ぐなどの免疫反応を担っているリンパ球という細胞が腫瘍化する病気です。リンパ球は全身に分布しているため、リンパ腫は全身どこでも発生する可能性があります。
犬のリンパ腫もリンパ節や消化管、肝臓、皮膚など様々な場所で発生します。リンパ腫の種類によっては、悪性度が高く、治療が困難であったり、予後が厳しい場合もあります。
今回の患者さんで見つかった「脾臓の低悪性度リンパ腫」は、リンパ腫の中でも比較的おとなしい(低悪性度)タイプのもので、治療として脾臓摘出を行えば、抗がん剤などの化学療法を実施しなくても、予後は良いケースが多いというデータが出ています。
今回の患者さんでは、摘出前の検査で脾臓以外に明らかな腫瘍性病変は見つかっていないため、脾臓原発の低悪性度リンパ腫と判断し、摘出後の化学療法は実施せず、定期的な検査を行いながら、他の場所にリンパ腫が発生しないかを確認していくことになりました。
今回手術を頑張ってくれた患者さんには、リンパ腫の再発がなく、元気な日々を過ごして欲しいと思います。